このサイトのメインコンテンツであるリッドを語るまえにまずお話ししたいのは、マグカップです。
持ち物の軽量化に取り組んでいる、いわゆる「ウルトラライトハイカー」は、一般的な800ml~1000ml程度のサイズのコッヘル(クッカー)をもちいず、さらに小さくて軽量な、金属製のマグカップを利用してお湯をつくります。
その場合のマグの容量は、450ml~600mlまでのアルミやチタンのシングルウォールマグが多くなっています。これらのマグに必要な量の水を入れて、直接火にかけてお湯を沸かすのです。(ちなみにダブルウォールは構造上、内部が空洞になっています。火にかけると破損しますので向きません。ご注意ください。)
軽量ハイキングの食事によく利用されるアルファ米やデハイドレイテッドフード、粉末のスープやコーヒーなどをつくる際に必要なお湯の量は150ml~200ml程度です。一回で400ml程度のお湯を沸かせば、コーヒーを飲みながら、アルファ米+粉末スープで雑炊ができあがるのを待つことができるのです。
組み合わせるアルコールストーブは、別途「軽量なストーブたち」のページで説明していますが、ここではよく使われるシングルチタンマグを順にご紹介しましょう。
(あくまでも筆者が探した範囲です。マグの写真をさわると、比較的安価に購入できるストアサイトを表示することもできます。もっとよいサイトがあれば、ページ一番下のコメント欄へ書き込みをお願いします。情報お待ちしてます。)
重量:80g 容量:600ml
材質:チタニウム
価格:2789円
このマグはウルトラライトとはいっても比較的大きめ、容量に余裕のあるサイズです。小さめのカレーやシチューなどのレトルトフードを湯煎にかけたり、乾麺をゆでたり、とクッカーに近い使い方も可能です。スノーピーク社のチタンマグは、あまり板厚を薄くとらず、頑丈にできていますので安心です。メーカーならスノーピーク、サイズはこの600mlから入ると無理が少ないでしょう。
ハンドルもフォールディングタイプで、折りたたむことができて収納もコンパクトです。純正のリッド(フタ)は発売されていませんが、ガレージメーカーからアフターマーケット製品が販売されています。(このリッド、品質は良いのですが、価格が少々高くて3000円強、となっています。じつは筆者も、2014年1月から軽量な「かぶとやま工房」チタニウムリッドを販売開始しています。)
重量:70g 容量:450ml
材質:チタニウム
価格:2192円 ※在庫切れ多し
同じくスノーピーク社の450mlサイズです。このメーカーのチタンマグは板厚があり、丈夫で本当に安心できます。
さきほどの600mlサイズではまだまだ余裕のある容量でしたが、より軽量化をつきつめるならば、このサイズがおすすめです。これでも200ml×2杯分=400mlのお湯を同時に沸かすことができますので、充分使用に耐えうるでしょう。
また、このサイズのリッドも純正品はありません(厳密にいえば、そのまま加熱のできるものはありません)。他のメーカーやガレージメーカーから、これに適合するリッドが発売されています。
リッドを使うと沸騰までの時間の短縮ができます。燃料の節約にもなりますし、それが携行する燃料の重量を減らすことにつながり、さらなる軽量化ができるのです。
このサイズのリッドは「リッドについて」で詳しく書きたいと思いますが、1500円強~3000円強です。筆者もこのSP450マグに適合する汎用チタニウムリッドを製造・販売し始めました。マグ本体と組み合わせて、4000円弱の金額でポットセットが完成します。
重量:67g 容量:300ml
材質:チタニウム
価格:1869円 ※フォールディングタイプ ※在庫切れ多し
このマグはもう1タイプあります。
重量:47g 容量:300ml
材質:チタニウム
価格:1545円 ※フィックスハンドルタイプ
おそらくここからは、あまり実践している人は少ない領域に入ると思いますが、300mlサイズという選択もあります。一回200mlの湯沸しを最低単位とすれば、このサイズの利用も十分視野に入れることができます。
フォールディングハンドルタイプは450mlマグとほぼ重量は変わりませんが、特筆すべきはそのサイズです。筆者は仕事の際にもこのマグを非常用ポットセットとしてアタッシュケースに携行しています。(リッド・ストーブは自作したものを使用) フィックスハンドルタイプは、フォールディングハンドルタイプに比較して20gも軽く、収納上で問題がなければ、こちらもおすすめできます。
このサイズが一般化していない理由としては、おそらく3つあります。
1.ウルトラライトハイカーといえ、そもそもそこまで切り詰める発想をするひとが少ない。
2.これにあうリッドがない。
3.これにあうストーブやゴトクがない。
まずひとつめですが、これはたしかに汎用性が下がります。アルファ米+粉末スープの雑炊用に一回分のお湯を沸かし、食後のコーヒーや紅茶用にまたもう一回沸かし、といったような都度沸かしをするようなスタイルとなります。これは固形燃料を火にかけ、こまめに吹き消して使うといったことを知っていれば問題なくできるのですが、まだあまり一般的でないのでしょう。
ふたつめのリッド(ふた)についてです。スノーピーク社から発売されている純正のリッドはダブルウォール用ということはありますが、シングルウォール用にもはまりますので、この点はよいでしょう。問題はその素材です。ABS樹脂とシリコン樹脂の組合せでできていますので、直火にかけると溶解の恐れがあり、使用に耐えないのです。容量が少ないですので、リッドがなくても湯沸しにそれほど時間はかからないのですが、何か効率が悪い気がします。筆者はこのマグに適合するチタニウムリッドを製作(と少量ですが販売も)しています。これについては、「リッド・フタについて」のページで詳しく書くことにします。
最後に3つめの、ストーブやゴトクについてですが、確かに既成品であうストーブやゴトクが少ないことが挙げられます。このマグの直径75mmは、一般メーカーのアルコールストーブやエスビットのチタニウムストーブなどではうまくのらないサイズとなっています。
ただ、よく調べていくと、ガレージメーカーに気の利いたプロダクトがあることに気づきます。固形燃料では、アトリエ雪月花の「TriPod Air」や「TriPod Power」があります。また、アルコールストーブではT’s Stoveの「サイドB」シリーズがあります。
思い切って、小口径のアルミ缶を加工して、自分でアルコールバーナーやゴトクを作ってしまうという手もあります。DIY工作のスキルや安全な場所での検証を行うといった必要はありますが、自分で作ったストーブやゴトクは、なんとも愛着がわくものです。
重量:55g 容量:220ml
材質:チタニウム
価格:1814円
ここまでくると、用途は限られます。なんとか200mlを湯沸しできるギリギリのサイズとなります。一応尾西食品のアルファ米などは150mlのお湯でもどせますし、スープやコーヒーの一杯ならば、どうにかこのサイズで間に合います。
ただ、重量的にはさきほどの「スノーピーク社チタンシングルマグ300」が47gと有利です。あまり軽量化としての効果は薄いでしょう。コンパクトで場所を選ばず狭いスペースに忍ばせておくような、「ミニマルマグポット」としての存在意義に限られます。
重量:56g 容量:370ml
材質:チタニウム
価格:3672円 ※品切れ多し
スノーピーク社の「チタンシングルマグ450」と同口径のマグです。一般的なアルコールストーブやエスビット・チタニウムストーブなども使用でき汎用性が高く、かつ軽量です。価格はそこそこしますが、価値のある一品といえます。
「チタンシングルマグ450」用の各種リッドを流用できることがこのマグの魅力です。EPIgasから発売されているチタニウムリッドや、ガレージメーカー製のもので使えるものがあります。
難点は揃えているショップが少ないことでしょうか。東京であれば三鷹の「ハイカーズデポ」、大阪であれば「UTILITY Outdoor」、神戸であれば「白馬堂」という、ガレージメーカーを含めた品ぞろえのセレクトショップで取扱いがありました。
ちなみに、手元のものは実測値55gでした。容量の公称は300mlと違うものの、EPIgasからも、ほぼ同サイズのもの(下記)がでています。こちらは実測52gで価格も安いのですが、あまり火にかけることを推奨していないようでした。(変形する恐れがあるのでしょうか。確かにEPIgasのそれには底辺部のフランジ加工やハンドル部分の工夫がありません。)
重量:56g 容量:330ml
材質:チタニウム
価格:1937円
ほかにもいくつか、スノーピーク社のマグと直径が同じプロダクトを紹介しておきましょう。
重量:65g 容量:450ml
材質:チタニウム
価格:3700円 ※品切れ多し
スノーピーク社の「チタンシングルマグ450」と同口径、同サイズながら5g軽量に作られたマグです。リッドも同じものを利用することができます。火にかけられることを想定して、ハンドル下部に加熱よけの工夫がなされています。あまりもっているひとが少ないため、「みせマグ」としてもよいかもしれません。筆者の場合は大阪・南堀江の「UTILITY Outdoor」さんでわけていただきました。
重量:70g(※実測65g) 容量:450ml
材質:チタニウム
価格:2160円
2013年のはじめにリリースされたベルモント社のチタンマグ(型番BM-095)です。Amazonでは上記の価格でありました。(送料が別途525円、つまり合計で2285円かかるようでした。)
ハンドル下部が膨らんでいるユニークなスタイルです。直火にかけるとことを考えると、つけかえて逆にしてみてもよいです。マグ底部には加熱変形防止のための円形の段差がつけられています。
このマグは良いマグなのですが、店頭展示をみかけたことがほとんどありません。面白いプロダクトを出していて、筆者の好きなブランドなのですが…。
実物を見られるのは、関西圏では筆者の知る限り六甲の「白馬堂」さんのみです。(これも筆者が無理をお願いして「置いていただいた」というほうが良いかもしれません。)
重量:70g 容量:450ml
材質:チタニウム
価格:1955円
上記のベルモント社のマグとほぼ同じ形状なのですが、表面仕上げがマットな印象です。細かいサンドブラスト加工が施されているのでしょう。
こちらのマグの底部にも加熱変形防止に円形の段差がつけられています。
MSRのマグも載せておきます。これもほぼ同口径ですが、少しだけこちらのほうが径が狭くなっています。
重量:50g(※実測56g) 容量:400ml
材質:チタニウム
価格:5264円
筆者の製作したSP450用のリッド(8g程度)も少々きついながら、ぎりぎりはまります。合計65gアンダーの超軽量チタンポットセットが組めますので、こちらも参考にしてみてください。
「EVERNEWチタンカップ400FD EBY265 」
重量:60g(※実測50g) 容量400ml
材質:チタニウム
価格:1600円~1800円程度
薄いチタニウムで作られた幅広のフォルム。110gのガスカートリッジがちょうどはまる大きさのマグカップです。ガスストーブでもアルコールストーブでも直火にかけられるので重宝します。
※2014年4月29日追記: このマグに合うリッドも製作しました。記事はこちら。
チタニウム製品ばかりでしたので、最後にこういったものもあるということでご紹介しておきます。
重量:107g(実測) 容量:540ml
材質:アルミニウム
価格: 税込で850円。⇒2014年5月現在、再生産されたようですが、すぐに完売となりました。
いわずと知れた、「無印良品」改め、「MUJI」のアルミマグカップです。最大の利点はその価格、コストパフォーマンスです。
熱伝導率の高さゆえ、直火の湯沸しも早いのですが、ハンドル部分が加熱されてしまい素手では持てなくなります。ハンカチや軍手を使ってつかむようにします。また、これにあうフタがありませんので、筆者の場合は自作しています。フタつきで炊飯などをする場合には非常にうまく1合のお米を炊くことができ、じつは密かなお気に入りとなっています。
残念ながら、このマグは店舗では在庫限りとなっていました。ファンが多いようであれば、専用リッドも製品化して発売してみようかなと考えていましたが、MUJIの中のひとに相談したところ、定番品として販売する予定はありません、ということでした。
というわけで、一部のMUJIマグフリークのひと向けに製作・販売することはありますが、プロダクト化するところまでは至っていません。(お声がけをいただいたら、受注製作はお受けしています。)
各マグポットの加熱のスピードアップ、燃料の節約には、リッド(フタ)がかかせません。
リッドについては、このブログサイトの「リッド・フタについて」のページに書いていますので、読んでみてください。
お仕事でチタンを扱われているんですね…それはちょっと、うらやましいです。
山のチタン製品は、軽くて丈夫なので薄く作ってあることが多いんですよね。
そのため料理などをやろうとすると、こげつきやすいなどクセがでます。
でも、湯沸しに特化したかたちで考えると、やはりチタンという選択が一番のようです。
※でも、ちょっと練習すればチタンマグでも炊飯をすることもできます。
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ピンバック: ロッキーカップで炊飯 | マグのフタを考えてみる。
ピンバック: あけましておめでとうございます。 | マグのフタを考えてみる。
ピンバック: Snowepeak シングルチタンマグについて。 | マグのフタを考えてみる。
ピンバック: Snowpeak シングルチタンマグについて。 | マグのフタを考えてみる。
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